法律業界のIT化について

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最近、対話式AIが作成した質問が国会の場で用いられたほか、経済産業大臣が将来的に対話式AIを国会答弁の対応などに活用する可能性を言及するなど、AI技術の実用化に関するニュースをよく目にします。

また、画像生成AIの進化に伴い、AIを利用した画像の著作権をどうするか、人間の作家がAIによって著作権が侵害されたとの主張をどうするかといった新たな法律問題も表面化してきており、昨今のIT技術の急速な進歩には驚かされるばかりです。

このような先進的な業界の進歩速度とは比ぶべくもありませんが、ここ数年は私が属する法曹界にもIT化の波が押し寄せております。

例えば、数年前から一般的な民事訴訟についてはweb会議が導入されており、コロナ禍もあいまって現在ではかなり普及が進んでいます。

かくいう私も、熊本のオフィスの自席から日本各地の裁判所で行われている期日に参加したり、裁判所のweb会議で使われるTeamsの接続障害のニュースにはらはらしたりする日々を送っています。

そしてIT化の波は離婚や相続の調停、差押え等の民事執行、破産申立てといった、民事訴訟ではない各種の法的手続にも及ぼうとしています。

先日はこれらの手続のIT化に関する要綱案が法制審議会の総会で採択されたようで、現在通常国会で法案の採択に向けた審議がされていることでしょう。

これらの手続がIT化されることによって変わる点は多々ありますが、一番大きいのは裁判所に出頭する手間が省けることでしょう。

現在の法律では裁判等の管轄が事件類型ごとに決まっており、場合によっては家から遠い裁判所に出頭しなければならないことも多々あります。

また、離婚や相続に関する調停については、遠くの裁判所であっても電話を使って弁護士事務所や最寄りの裁判所から参加することもできましたが、やはり調停という話し合いの場で相手の姿が見えないというのは、なんともやりにくいものです。

上記のIT化が実現すれば、遠くの裁判所で行われる手続でもweb会議を利用して弁護士事務所や最寄りの裁判所から手続に参加できますし、web会議であればきちんと調停委員の方々の様子を見ながら話をすることもできます。

今後は調停や破産の手続についてもより使いやすくなると言えるでしょう。

また、先行してIT化が行われている一般的な民事訴訟も、まだ完全IT化のためのプロセスの途中です。

web会議が利用できると言っても、現時点では初回期日や尋問・和解が行われる期日については出頭が必要になる場合が多いですし、裁判上の書面についても多くの場合パソコンで作成したものを印刷して紙媒体(弁護士は大体FAXを使用します)で提出しているというのが現状です。

紙記録の保管については場所や費用の問題が生じますし、何より一度データで作成したものを、わざわざ紙におこして原告・被告・裁判所の三者が紙で保管し、期日のたびに法廷まで持参するというのは、無駄が多いといわざるを得ません。

今後IT化のフェーズが進めば、訴え提起から各種書面や証拠の提出、当事者の同意がある場合等は尋問までオンラインでできるようになります。

それどころか、弁護士については各種書面のオンラインでの提出が義務づけられますし(私がいる熊本の裁判所では、今年6月から書面のオンライン提出が試験的に開始される予定です)、書面をwebで出すのであれば自然と期日についてもweb参加の割合がかなり高くなりそうです。

たまの出張がなくなって事務所に引きこもる時間がますます増えるという点で弁護士としては喜ばしくない話かもしれませんが、依頼者の方々からすれば旅費や日当等が節約でき、尋問の際に自らが出頭する必要もなくなるので、より各種裁判手続が利用しやすくなるといえます。

ただ、裁判で扱われる情報の中には個人のプライバシーや企業の運営に関わる重大な情報が多く含まれます。

そして裁判手続をIT化する以上、当然ハッキングやなりすましによる情報漏洩のリスクはつきまといます。

利用する側からすれば利便性の高い裁判手続のIT化ですが、今後も時間をかけて更なる進化と最適化をしていく必要がありそうです。

また、訴訟上の書面のやりとりについては遠隔で十分対応できそうですが、話し合いがベースの調停や裁判上の和解手続については、時には直接現地に出向いて調停委員や裁判官と話した方がよい場合もあるでしょう。

また、交通事故など現地に出向いて現場を確認することの有用性が高い案件もそれなりにあります。

何より、裁判などが始まるはるか前の、トラブルが生じて今まさに困っている、何をどうしたらいいかも分からないという状態の方からすれば、直接弁護士と顔を合わせて相談して適切なアドバイスを受けることで、初めて安心してトラブルに向き合って適切な解決に向けて進み出すことができることも多いでしょう。

そういった意味では、裁判手続のIT化が進もうがAIが一般的な法律上のアドバイス程度はできるようになろうが、我々弁護士が直接全国各地に足を運ぶべき場合もまだ多くありそうです。

岡野法律事務所では、このたび新たに札幌支店・千葉支店・大阪支店・松山支店を開設し、これまで以上に多くの地域の方々にお気軽にご利用いただけるようになりました。

都道府県をまたぐ必要がある事件でも、各本支店間のネットワークを利用して最適な解決ができるよう尽力いたしますので、お困りの際は是非岡野法律事務所にご相談下さい。

文責:池上

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