マスク不着用によるトラブルを弁護士が解説

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先日、将棋のプロ棋士同士の対局で、長時間マスクをつけていなかったことを理由とする反則負けの判定が下されたこと、及びこの判定について反則負けとされた棋士から日本将棋連盟に対して不服申立が行われたことが話題となりました。

この対局は、名人3期経験者と現役王座という実力者同士の対局で、深夜に及ぶ熱戦が思わぬ形で決着をみたこと、不服申立書がTwitter上で公開されて判定の根拠となった臨時対局規定の問題点が多く指摘されたこともあり、現在に至るまで様々な議論を呼んでいます。

新型コロナウイルスの発生・感染拡大に伴い生じた紛争は多数ありますが、もちろんこのマスク着用に関するトラブルも多数生じています。

今回のように特定の団体の内規に基づく処置の是非が問題となった事例もあれば、それを超えて法廷闘争にまで発展した事例も多くあり、マスク着用の有無に関する紛争は決して他人事ではなくなっています。

2019年12月に最初の新型コロナの感染者が確認されてからもうすぐ3年ということで、本稿ではマスク着用に関するトラブルについて概観して参ります。

まずマスク着用トラブル特有の問題点といえば、そもそもマスク着用ルールが生まれたのが2・3年前であること、しかもマスク着用の必要性に関する議論も絶えず変遷していることでしょう。

3年前までは公共の場でマスクをしないことが何らかのルール違反になることは全く考えられませんでした。

しかし、2年前はちょうど第3波の始まりの時期で全国の新規感染者数が2000人を超えたと大騒ぎになっており、マスク着用どころか不要不急の外出を控えるべしということで、私が当時よく乗車していた広島・熊本間の新幹線もほとんど空席でした。

ところが、現在ではワクチンの複数回接種率も高まり、昨年総理大臣に就任した岸田首相が所信表明演説で屋外は原則マスク不要を掲げるなど、脱マスクに向けた動きが始まっているという状態です。

このようにルールの前提となる社会事情が毎年のように変化するとなると、当然ルール自体がすぐ時代遅れになったり、ルールを設定・改正するにしても内容が十分吟味されずに不適切・不明確な内容になったりすることがあり得ます。

冒頭の臨時対局規定もその実例の一つと言えるでしょう。

プロ棋士にとっては順位戦一局の勝敗で今後の収入が大きく変わることもあり、反則負けというのは一定の重みのある処分です。

そのような不利益を生じさせるルールの内容は明確である必要がありますが、反則となるマスク不着用の時間や事前の警告等の手続が整備されていなかったようです。

また、対局者同士が会話をすることが全くと言っていいほどないプロ棋士同士の対局の場で、マスクをつけていないことで反則負けになるというルールの妥当性自体も疑問視されるところです。

冒頭の事例の他にも、先日はマスクの着用を拒んだ乗客を途中下車させたバス事業者に対して、運輸局がバス車両の使用禁止を命じる行政処分を出したことも話題となりました。

バス会社としては当然他の乗客に配慮した措置であると主張しましたが、運送約款にマスクを着用していないことを理由に乗車を拒否できる旨が明記されていなかったことから、上記処分が下されるに至ったようです。

この件も新型コロナ蔓延にあわせたルール改定が間に合っていなかったことで生じたトラブルといえます。

他方で、公共交通機関が「マスク非着用の客は下車させてよい」というルールを作っていたとしても、そのルール自体が有効か、有効としてそれはいつまで通用するのかといった問題も生じるところでしょう。

また、昨年市議会でいわゆる「鼻マスク」の状態で発言しようとした市議が議長から退席を命じられたことを皮切りに、議会は市議に対して議員辞職勧告決議をし、市議は市が発言を禁じた措置の取消等を求める訴えを提起するなど、議会と法廷の場で激しい応酬がされた事例もありました(なお、今年に入って当該市議が市議選で落選したことを理由に訴えが取下げられたため、処分の適法性について法的な判断が下されることはありませんでした)。

議会進行に関しては一般に議長の裁量の範囲が大きく、かつ一昨年から昨年辺りの社会情勢を踏まえれば、マスクをしないことに対する反対の声はかなり強かったものと思われます。

ただ、首相が積極的にノーマスクで記者会見を行ったり各国首脳と会談したりしている現時点から見ると、本当に議員辞職勧告という強い措置まで行う必要性があったのか、やや疑問に感じられます。

このようにマスク着用ルールをめぐる紛争は多くあり、ルール違反を指摘する側も指摘された側も、規定内容の明確性や最終的な判断の妥当性について頭を悩ませることとなります。

もちろん「悪法も法」ということでルールがある以上はそれを守らなければならないという考え方もあるところですが、ルール自体に一定の欠陥があったり、違反の程度に比してあまりに重い不利益を被ったりする場合まで、当然にルール違反の誹りを甘受しなければならないということにはなりません。

岡野法律事務所では、新型コロナウイルス感染防止のため十分な対策をとりつつ、マスク着用ルールに限らずあらゆる規則やそれに基づく処分の是非等の相談を広く承っております。

ご来所いただいての相談の場合は屋内で会話をする必要があるためお客様にもマスク着用をお願いしておりますが、支店によってはお電話での相談等も承っておりますので、お困りの際は是非お気軽にお近くの岡野法律事務所にお問い合わせ下さい。

文責:池上

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