ネット上の誹謗中傷に対応するための法的手続について弁護士が解説

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10月に入り、プロ野球もレギュラーシーズン終盤そしてクライマックスシリーズ・日本シリーズへという佳境を迎えています。

私がいる熊本では、九州学院高校出身の村上宗隆選手の56号ホームランと最年少三冠王達成という明るいニュースや、我らがソフトバンクホークスの歴史的V逸という悲しいニュース等が、日々紙面を飾っています。

大半のプロ野球ファンがペナントレースの山場を楽しめている一方で、中には加熱しすぎてネット上で度を超えた誹謗中傷に及んでしまう方も一定数存在するようです。

先日ソフトバンクホークスが特定の選手に対する悪質な書き込みに対して法的措置を検討する旨発表したほか、広島カープの試合内容について被爆者差別用語を用いたネット上の書き込みが日常的に行われていることが問題となるなど、熱いポストシーズンに水を差す何とも残念極まりない事例が相次いでいます。

このようなネット上の誹謗中傷への対策の一環として、今月1日にプロバイダ責任制限法の一部を改正する法律が施行されました。

何とも耳慣れない法律ですが、要するに匿名でネット上に悪質な書き込みをした人物を特定する手続を、よりスピーディかつ効果的に行うための法改正とお考え下さい。

この法律は、一昨年SNS上の誹謗中傷で被害者が自殺してしまうという悲しい事件が広く報道されたことをきっかけに、昨年4月に成立したものです。

今年7月7日に施行された侮辱罪を厳罰化する刑法改正と併せて、新型コロナ以上に終息の見通しが立たないネット上の誹謗中傷を抑制する施策の一つとして位置づけられます。

現実世界で誹謗中傷に及ぶような輩に対する対応としては、基本は無視、度が過ぎる場合には110番通報のうえ侮辱・名誉毀損として損害賠償請求等を検討するというのが一般的な手法です。

しかしながら、ネット上の書き込みについては通常匿名で行われるため、損害賠償請求をするにあたってまず加害者を特定するという作業が必要になります。

そして、従来であれば加害者を特定するためには①5ちゃんねるやTwitterなどのウェブサイト運営者に対して加害者のログ情報の開示を求め、そこで得たログ情報を元に②OCNやYahoo!BBといった経由プロバイダに対して加害者の住所や氏名の開示を求める、という手続を踏む必要がありました(他にもバリエーションはありますが、紙幅の関係上割愛します)。

この二段階の手続は面倒であるだけでなく、ログ情報が削除されるまでの間(事業者によって異なりますが、おおよそ3か月以内の場合が多いです)に必要な手続をとる必要があり、ネット上で誹謗中傷を受けた被害者の方々が泣き寝入りを強いられる原因の一つとなっていました。

そこで、今回の法改正でこの二段階の手続を一元化した手続が新設され、一度の申立てで加害者の住所氏名の開示までたどり着けることとなりました。

本稿執筆時点ではこの手続が最後まで完遂された事例はありませんが、この手続を利用した第1号の事例で、申立から3日後にサイト運営者にログ情報を開示する命令が出たことから、相当な迅速化がされるのではないかと期待されています。

また、法改正そのものとは関係がありませんが、今年9月にTwitter社が日本法人での登記を完了したことも、ネット上の誹謗中傷抑止の追い風になる出来事と言えます。

日本での登記をしていない海外のウェブサイト運営者を相手取って各種手続を行う場合、申立書等様々な書類に翻訳文をつける必要があったり、書面の送付にも時間がかかったりする等のデメリットがあります。

しかしながら、今後は日本法人を相手取れば足りるため、Twitter上で誹謗中傷にあたる書き込みが行われた場合に、上記のような手間がある程度軽減されることが期待されます。

実は、海外企業が運営するウェブサイト上での誹謗中傷に対処するため、法務省が昨年から海外IT企業に対して国内での登記義務を周知しており、従わない企業には過料を科すべきとの通知を発するなどしていました。

これを受けて、7月にはGoogle社とMicrosoft社が日本国内での登記を完了しており、Twitter社の登記もこの流れに続くものです。

法務省の試みが一定の成果を生んだと言えるでしょう。

このように、昨今の法改正等により、ネット上で行われる誹謗中傷に対応するための法的手続は、以前よりは利用しやすくなっていると言えるでしょう。

しかしながら、改正法に基づいて新設された手続がどのように運用されるかは注視が必要ですし、加害者の特定後にあらためて損害賠償請求等をしなければならないという手間は従前と変わりはありません。

何より、ネット上で誹謗中傷を繰り返す不埒な輩は依然として存在し続けており、思わぬ形でトラブルに巻き込まれる可能性もまた依然として存在し続けます。

岡野法律事務所では、多数の所属弁護士の間で法改正やその運用等に関する最新の情報を共有し、ネット上の誹謗中傷にお悩みの方々のお力にもなれるよう、日々研鑽を積んでおります。

お困りの際は、是非お近くの岡野法律事務所にご相談下さい。

文責:池上

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