コロナ禍での飲み会参加を理由とする懲戒処分等の是非

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先日、とある力士が所属する協会が定める新型コロナ対策のガイドラインに反して深夜の会食を繰り返し、その後は虚偽の報告をするなどしていたとして、所属する協会から6場所の出場停止と半年間50%の報酬減額という処分が下されました。

また、上記の会食に同行し、その後の口裏あわせに協力するなどした新聞社の記者は、所属する会社から諭旨解雇処分とされました。

この件については、処分が重すぎるという意見や、自主的に引退すべきという意見、先例との釣り合いが取れていないという意見など、様々な意見が飛び交っているようです。

いずれも所属する組織に特殊性があり、その判断の是非について詳しい事情を知らない私が論ずることは差し控えますが、コロナ禍での飲み会参加の是非というのは、誰しも直面する可能性のある問題です。

もちろん、その内容については「先輩から飲み会に誘われたけど参加したくない」といった個人の悩みや「社内規定に違反して飲み会に参加した従業員がおり、そこからクラスターが発生してしまった」といった会社側の悩み等、様々考えられるところです。

そこで、ここでは冒頭の事例をふまえて、「コロナ禍での飲み会参加を理由とする懲戒処分の是非」というテーマに絞り、処分を検討している会社側の視点から検討を行ってみましょう。

まず、結論から述べてしまえば、単にコロナ禍での飲み会参加を理由として懲戒処分を科したとしても基本的には違法・無効とされる可能性が高いです。

なぜならば、飲み会は業務時間外で行われる、労働者の私生活に属するものであって、基本的に使用者が口を出してよい理由がないからです。

もちろん、私生活であっても重大な犯罪に関与するなどして大々的に報道がなされ、使用者の事業活動に直接影響があるといった場合は話が異なりますが、飲み会への参加というだけでは当然重大な犯罪行為には該当しません。

プライベートで不倫をしてしまって離婚したとか、交通事故を起こしてガードレールをへこませてしまったとかいった場合に、それを理由に懲戒処分を科すことができないのと同じように、コロナ禍での飲み会参加を理由に懲戒処分を科すことは基本的にはできないのです。

また、その飲み会に参加した労働者が新型コロナウイルスに感染しており、それが原因で数日間会社を閉鎖しなければならなくなったという場合も、感染した労働者に対して懲戒処分を科したり罰金を支払うよう求めたりすることはできません。

感染の原因がその問題となっている飲み会であるということを特定するのは困難ですし、そもそも感染症に罹ったことを理由に懲戒処分等を科すること自体が不当とされる可能性が極めて高いからです。

しかしながら、ご時世もあり、社内規定に反して多人数での飲み会を行ったのに何のお咎めもなしで良いのか、というご意見もあるところでしょう。

今まで述べたのは懲戒処分という正式な処分を科すことの是非であり、単に口頭での注意・指導を行うだけであれば、それを行ったことが大きな問題になることはありません。

また、一度注意をしたにも関わらず繰り返し社内規定に反して多人数の飲み会を行うようなことがあれば、それはそれで職場規律違反にあたり、けん責・戒告程度の懲戒処分を科することが許容されることもあります。

いずれにせよ、懲戒処分が検討されるようになること自体望ましくはないので、多人数の飲み会への参加を避けて欲しいのであれば、会社側としてはまず日頃からその旨を周知して、社内規定も整備しておくことが肝要です。

感染者が出れば一部の事業を停止する必要がある可能性もありますし、「本当は参加したくなかった、無理矢理参加させられた」という労働者が出てきて問題になる可能性もあります。

そういった多人数での飲み会を禁止する理由をきちんと労働者に伝えて、納得して頂くようにしましょう。

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