【弁護士が解説】ツイッターで他人の投稿を「リツイート」しただけで違法になる?

先日、Twitterで他人の投稿を「リツイート」したことを理由として、東京地裁が損害賠償請求を一定額認容したことが話題となりました。

この事件は、名誉毀損に該当するようなSNS上のイラスト投稿やその投稿のリツイートにより精神的苦痛を受けたとして、イラストの投稿者とその投稿をリツイートした人が訴えられたものです。

ボタン一つで簡単に利用できるリツイートという行為によって損害賠償請求を受ける可能性があるという結論から、下級審判決ながら一定のインパクトを有しているようです。

そこで、本稿ではリツイートを巡る法的な問題について解説して参ります。

法的判断について検討する前に、まず確認すべきは「そもそもリツイートって何?」という点です。

普段Twitter等のSNSを利用されている方には不要な説明かもしれませんが、まずはこの点について確認を行います。

Twitter社のヘルプセンターによれば、「リツイートとは、ツイートを再びツイートすることです。

Twitterのリツイート機能を使うと、そのツイートをフォロワー全員とすばやく共有できます。

自分のツイートや別のアカウントのツイートをリツイートすることができます。」とのことです。

要するに「他人の投稿を自分のページにも表示させることで、その投稿をみんなと共有する」という目的で行われることが多いようです。

具体例を挙げれば、自分が面白いと思った他人の投稿をリツイートすることで友達と共有して話のタネにして楽しんだり、自社商品を絶賛する他人の投稿をリツイートすることで商品の宣伝をしたり、といった使われ方をしているようです。

そこで問題となってくるのが、このリツイートという行為に「リツイートした投稿の内容をそのまま不特定多数の人物に伝達する」という性格があるという点です。

この性格ゆえに、他人の名誉を不当に傷つける投稿等の違法性が明確な投稿をそのままリツイートした場合、元の投稿と同様にリツイート行為についても違法との評価が下される可能性が高くなります。

実際に、名誉毀損等に該当する違法な投稿をリツイートした人に対する損害賠償請求を認容する下級審判例が、ここ数年は相次いでいます。

また、最高裁も令和2年7月21日判決で、ある投稿についてリツイートをした人物が他人の権利を違法に侵害したという判断を下しています(こちらは損害賠償請求ではなく違法な投稿をした人物を特定するための「発信者情報開示請求」に対する判決であることは留意が必要です)。

したがって、他人の投稿をリツイートするときは、まず元の投稿が違法なものでないかよく考えることが必要となります。

ただし、ここで問題となるのは「元の投稿が違法なものでないか」という判断は容易ではないという点です。

この記事に直接記載できないような露骨な表現が用いられている場合はともかく、一つの投稿の違法性を一見しただけで判断するのは、弁護士でも困難な場合が多いです。

もちろん、元の投稿が違法なものであることを知らずに違法な投稿をリツイートしてしまったような場合にまで、リツイート行為が100%違法と評価されるわけではありません。しかし、そのような場合であっても違法性に気づかなかったことについて過失があったと判断される可能性も十分あります。

違法な投稿をリツイートした人が責任を負うケースについて誰もが一見して分かるような判断基準があれば良いのですが、現時点ではそのような基準はありません。

また、特に名誉毀損については投稿した側の表現の自由の保護という視点も絡んで問題が複雑になりやすいところで、今後も分かりやすい基準ができる可能性はそう高くはないでしょう。

Twitter等の各種SNSは気軽に投稿できることから急速に広まったもので、リツイート機能も気軽な投稿のために重要な機能の一つのようですが、現時点では誰かを批判するような他人の投稿をリツイートすることは極力控えるという、何とも慎重な対応を推奨せざるを得なさそうです。

リツイートの件に限らず、最近はインターネット上のトラブルがますます増えているようで、弊所でもそのようなお問い合わせが増えております。

皆さんのお悩みの内容も、離婚や不貞に絡んだ相手方がSNSに自分の悪口を書いている、通信会社から「2週間以内に発信者情報開示に関わる意見照会書を返送しろ」という手紙が届いた、等々と多岐にわたっております。

岡野法律事務所には若手からベテランまで多数の弁護士が在籍しており、各種インターネット上のトラブルに対応可能な実績ある弁護士も多数所属しております。

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文責:池上

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